第一章 サクラ-2

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紙パックの紅茶の話でしばらく盛り上がっていると、 ミルクティーとホットサンドが運ばれてきた。 私たちはホットサンドにかぶりついた。 「そういえば、 サクラさんは明日、 実家に何しに帰るの?」 森村さんが紙のおしぼりで口を拭きながら私に尋ねた。 私は少し迷った。 ハルと会うことは言わない方が良いだろうか。 男友達と二人で会うことを良く思わない男性もいるだろう。 私と森村さんは付き合っているわけではないし、 仮に付き合っていても森村さんはそんなことを気にする人ではないと思うけれど。 「高校のときの友達と会うんです。 あと、 今度ある結婚式のドレスを取りに」 結局、 私は全てを伝えないことにした。 「へえ。 楽しそうだね。 というか、 また結婚式があるの?」 幸い、 森村さんは結婚式の方に興味を持ったようだった。 「この歳になると結婚式ばかりで、 正直、 嫌になるよね。 お祝儀もばかにならないし」 彼の意見に私も心から同意した。 私たちはしばらく、 今まで出席した結婚式についての愚痴を言い合った。 結婚式に対して愚痴を言うなんて大人の楽しみの一つだと思う。 一時間程経った頃、 私たちは店を出た。 私たちが店を出たときには、 あたりはすっかり暗くなっていた。 外に出ると、 ひんやりとした空気が身体の熱を奪うように襲ってくる。 いよいよ、 薄手のコート一枚では寒さを防ぎきれなくなってきたようだ。
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