第二章 ハル

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トモがいつ、 サクラのことを好きになったのかは知らない。 俺たち三人は高校一年で同じクラスになり、 席が近かった俺とサクラが話すようになった。 トモは無口で無愛想なところがあり、 女子ともあまり話す方ではなかったから、 サクラと話すことはほとんど無かったと思う。 俺はサクラのことも好きだった。 もちろん、友達として。 サクラは俺がトモを好きだと知った後も態度が変わらなかった。 サクラ以外に俺の恋愛を話したことはないが、 彼女のような人は稀だと思う。 彼女には恋愛相談にも乗ってもらった。 高校卒業後は疎遠になってしまったが、 俺にとって彼女は大切な友達の一人だ。 サクラと会う約束をした日曜日は、 秋晴れで気持ちの良い日だった。 ときどき吹く風が少し冷たく、 冬が来ることを予感させる。 俺は久しぶりに来た高校の変わりように驚いていた。 ボロボロでひびがそこら中に入っていた校舎は、 真新しいアイボリーの壁をまとい堂々とした佇まいになっている。 校舎の奥には新しい体育館が設置予定らしく、 着々と建設が進んでいた。  「ハル」 声を掛けられて振り向くと、 懐かしい顔があった。 Tシャツにジーパンというラフな出で立ちの彼女が、 笑顔で手を振っている。 「サクラ、久しぶり」 高校時代、 肩にかからない長さだった彼女の髪は、 今では肩甲骨のあたりまで伸びている。 両耳につけられたピアスは彼女が動く度にゆらゆらと揺れていた。
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