第二章 ハル

8/18
前へ
/118ページ
次へ
「俺はミルクティー派だった。 トモは甘いのが苦手だったから、 ここの紅茶は飲めなかったんだ」 そう言った瞬間、 自分でもしまったと思った。 サクラは気まずそうに下を向いている。 そもそも、 こうして二人で会うきっかけになったのは、 トモの結婚だった。 高校時代に終わったと思っていた恋が、 実は終わっていなかったと気付いてしまった。 それは熱を失いながらも俺の心の中に生き続けていて、 結婚の知らせによって表に出てしまったのだ。 高校を卒業してから、 俺は女とも男とも何人か付き合った。 自分で言うのも何だが、 中性的なルックスと男女問わず親しくなれる性格のため、 一緒にいる相手に困ったことはない。 本気の恋もしたし、 結婚を考えた相手だっている。 それでも、 結婚に踏み切れなかったのは年齢でも相手でもなく、 俺自身に問題があったからだ。 今思えば、 トモを忘れられずにいる自分を押し殺すことが、 どうしても出来なかったのだと思う。 「ハルはさ、 まだトモのことが好きなの?」 サクラがおずおずと尋ねてくる。 「当たり前だろ」 俺は、 正直に答えた。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加