第二章 ハル

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彼女が変わっていないことへの安堵と、 自分の気持ちを認めてもらえたことに対する嬉しさで心が満たされていくのを感じる。 顔がニヤついているのがばれないように、 「そうかな」と気にしていないように答えた。 陸上部の練習は休憩に入ったようだ。 部員たちがどっとグラウンド脇に押し寄せ、 水分補給を始めた。 夏は終わったとはいえ、 動けばまだまだ暑い。 彼らは勢いよく水筒の中の水分を飲んでいる。 その姿は清々しくさえあった。 彼らの近くには二人のマネージャーが控えていて、 記録用紙を見ながら、 水分補給を終わった選手に話し掛けていた。 俺とサクラは、 黙ってベンチからその光景を眺めていた。 サクラがためらいながら、 口を開いた。 「高校のとき、 ハルはトモに告白したの?」 俺は驚いた。 その質問が来ることを予想していなかったわけではないのだが、 サクラがそれをするような性格ではないと思っていた。 彼女は昔はもう少し控えめで、 相手のテリトリーにうっかり入らないよう細心の注意を払うような性格だった。 今日の彼女は何というか、 積極的だ。 俺は「したよ」と短く答えた。
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