第二章 ハル

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「いつ?」 サクラの質問は続く。 「卒業式の少し前」 俺は観念して、 正直に答えることにした。 「ふられたけどな。 友達としてしか見れないって」 サクラは「そっか」と頷くと、 やや間があってから 「好きってどういうことだと思う?」と、 真剣な顔で尋ねてきた。 「…は?どうしたサクラ」 思わず尋ね返す俺に、 彼女は言った。 「私は高校のときハルを好きになって以来、 好きって気持ちがよくわからなくなった。 誰かを好きになってもそれは本当に好きなのかなって、 疑ってしまうんだ」 口を開けたままの俺を気にする様子もなく、 サクラは堰を切ったように話し出した。 「ハルがトモを想っているのと同じ期間、 私の中にはずっとハルがいた。 高校のときみたいに強い気持ちではないけど、 もやもやしてじっとりして恋愛感情と呼べるのかわからないも のだけど、 それでも私の中にはずっとハルがいたんだよ」 彼女の頬には涙がつたっていた。 「好きだよ、ハル」 掛け声と地面を蹴る音が遠くの方から聞こえてくる。 俺は何も言うことができなかった。 あの時のトモも、 同じ気持ちだったのだろうか。 *   ほら、 風が吹いてる ねえ、 声がきこえる グラウンド * 秋晴れの空は高い。 今日は絶好の練習日よりだ。
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