第二章 ハル

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しかし、 夏で部活を引退した三年生には酷な日である。 なぜ、 こんな天気の良い日に受験勉強なんてしなくてはいけないのだろうか。 教室を見回すと、 クラスメートは皆、 机に向かっていた。 今は数学の授業中である。 授業と言っても、 今は模試に向けて過去問ばかり解いている。 俺は数学が嫌いだ。 誰もかれもが真剣に教師の話を聞き、 問題で使う公式をノートに書き写している。 受験生は来週の模試に向けて必死だ。 なぜなら、 模試の結果が大学受験に大きく関わってくるからだ。 かくいう俺もそうなのだが。 窓の外を見るとすでに部活が始まっていた。 グラウンドでは野球部がウォーミングアップを行っている。 俺は知らず、 トモの姿を探していた。 もう三年生なのだから彼は部活に参加していないのだと気付き、 自分に呆れる。 俺とトモは小学校に入る前からの友達だ。 家が近所で、 小学校まではよく学校帰りに遊んでいた。 中学に上がると、 トモが野球部に入るというので俺も入部し、 一緒に練習をした。 長い時間、 俺とトモは一緒にいた。 中学一年生の冬、 トモが同じクラスの女の子に告白されて付き合うことになった。 教室や帰り道で一緒に話す彼らを見て、 俺は初めて嫉妬した。 トモではなく彼女に、 である。 同時に、 今までのトモに対する気持ちが友情ではなく恋愛感情だということに気付いた。 いつ友情から恋愛感情になっていたのか、 どこまでを友情と呼んで良いのかわからないが、 俺はきっとトモと出会った最初の頃から彼を特別に感じていたと思う。 もちろん、 そんなことは周りの友達にも家族にも言えなかった。
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