第二章 ハル

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 「こら。なによそ見してる」 気が付くと、 不機嫌そうな顔をした数学教師が目の前にいた。 若くてきれいな女の先生なら授業中よそ見なんてしないんだけどな。 周囲からクスクスと笑いが起こるなか、 俺は素直に「すみません」と謝り、 授業に戻った。 授業が終わり、 トモが部活に寄るというので俺は先に帰ることにした。 校舎を歩いていると、 向こうから見知った女子が歩いてくる。 サクラだ。 肩までの髪を後ろ手一つに結び、 靴下ではなく黒いタイツを履いていた。 サクラは別のクラスのため会うことは少なくなったが、 学校でも特に仲の良い友達だ。 初めてトモへの気持ちを打ち明けたのも、 サクラだった。 高校一年生で同じクラスになり仲良くなった彼女は、 不思議な子だった。 生徒会の書記係をしていて真面目だったが、 どこか抜けていて、 何でも受け入れてくれそうな雰囲気を持っていた。 だから、 俺も本音を言いやすかったのかもしれない。 彼女は最初、 驚いていたがその後も変わらず友達でいてくれた。 「久しぶり」 俺が声を掛けると、 サクラは少し疲れた表情で手を振った。 「受験勉強は順調?」 「まあまあかな」 サクラは呆れたように大げさに肩を落とす。
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