第二章 ハル

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「ハルは何で大学に行きたいと思ったの?」 そう問われて、はっとした。 彼女は本当に、何でもお見通しだ。 俺はトモと同じ大学に行きたかった。 トモはその大学にスポーツ推薦で受かったが、 俺は落ちた。 でも、 本当に大切なのはそこじゃない。 俺はトモと一緒にいる理由が欲しかった。 近所に住んでいる。 学校が同じ。 友達だから。 そんな理由だけではもう、傍にいられないことをわかっていたから。 「ハルが今、 本当にしたいことって何?受験勉強よりも大切なこと、 あるんでしょ?」 サクラは笑って言った。 「ありがとう」 俺がそう言うと、 彼女は困った顔をしてまた、笑った。 彼女が図書館に行くというので、 俺もついていくことにした。 苦手な数学を教えてもらおうと思う。 *   ほら、 風が吹いてる ああ、 何もきこえない 公園 * 三月。 暦の上では春だが寒さはまだ厳しい。 卒業式があと二日後に迫っていた。 大学受験を終え、 俺は何とか滑りこみで受かった県外の大学に行けることになった。 トモはスポーツ推薦をもらっていた大学にそのまま進学するらしい。 サクラは見事、 東京の大学に受かったということだ。 俺は大切な話があると、 家の近くの公園にトモを呼び出した。 滑り台とブランコがあるだけの小さなさびれた公園には、 人はほとんどいなかった。 トモは約束の時間ちょうどに来た。 相変わらず無表情で、 「よ」とだけ言った。 彼はいつもと変わらなかった。 外見もまとう雰囲気も。 それが、 今の俺にはとても悲しく思えた。
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