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「ハルは何で大学に行きたいと思ったの?」
そう問われて、はっとした。
彼女は本当に、何でもお見通しだ。
俺はトモと同じ大学に行きたかった。
トモはその大学にスポーツ推薦で受かったが、
俺は落ちた。
でも、
本当に大切なのはそこじゃない。
俺はトモと一緒にいる理由が欲しかった。
近所に住んでいる。
学校が同じ。
友達だから。
そんな理由だけではもう、傍にいられないことをわかっていたから。
「ハルが今、
本当にしたいことって何?受験勉強よりも大切なこと、
あるんでしょ?」
サクラは笑って言った。
「ありがとう」
俺がそう言うと、
彼女は困った顔をしてまた、笑った。
彼女が図書館に行くというので、
俺もついていくことにした。
苦手な数学を教えてもらおうと思う。
*
ほら、
風が吹いてる
ああ、
何もきこえない
公園
*
三月。
暦の上では春だが寒さはまだ厳しい。
卒業式があと二日後に迫っていた。
大学受験を終え、
俺は何とか滑りこみで受かった県外の大学に行けることになった。
トモはスポーツ推薦をもらっていた大学にそのまま進学するらしい。
サクラは見事、
東京の大学に受かったということだ。
俺は大切な話があると、
家の近くの公園にトモを呼び出した。
滑り台とブランコがあるだけの小さなさびれた公園には、
人はほとんどいなかった。
トモは約束の時間ちょうどに来た。
相変わらず無表情で、
「よ」とだけ言った。
彼はいつもと変わらなかった。
外見もまとう雰囲気も。
それが、
今の俺にはとても悲しく思えた。
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