第二章 ハル

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「トモとどうにかなりたいわけじゃない。 迷惑をかけたいわけでもない。 ただ、自分の気持ちを伝えたかった」 告白することで彼に迷惑をかけることも、 友達でいられなくなってしまうかもしれないことも理解していた。 だから、きっと俺の願いは矛盾している。 トモは驚きでしばらく身動きがとれずにいたが、 考えるように目を伏せた。  しばらくはどちらも言葉を発しなかった。 今までの俺の人生の中で最も長く、 重い沈黙だった。 俺は逃げ出したい気持ちに駆られた。 さっきのことはなかったことにしてくれ、 と謝ってしまいたい。 そう思ったとき、 トモは俺の肩にずっとかけたままだった手を離した。 「ごめん」 トモは一言、そう言った。 「うん」 俺は力なく頷く。 「ハルは友達だ。 そういうふうには見られない」 彼ははっきりとそう告げた。 「でも、俺の大事な友達だ」 そう言った彼の顔を、 俺は見ることができなかった。 「ごめん」 彼を好きになってしまったこと、 告白をして混乱させたこと、 そしてもう友達のままではいられないこと。 それらすべてに対する謝罪だった。 「謝るなよ」 その言葉は弱々しく、 迷子の子どものように不安げだった。 二人とも、もう話さなかった。   それからすぐ、 俺たちは別々に公園を出た。
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