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「ハルはすごいね」
「何が?」
言っている意味がよくわからないのか、
ハルはまじまじと私の顏を覗き込んだ。
それが気恥ずかしくて、
私は少し目をそらしながら言葉を続けた。
「…そんなにはっきりと人のことを好きって言えちゃうとことか、
ずっと一人の人を想ってるとことか、
すごいなって」
ハルはやっぱりよくわからないという風に首をひねった。
しかし、
褒められているのは嬉しいらしく、
少し照れながら「そうかな」と言った。
こういうやり取りを昔、
どこかでしたような気がする。
そう、
その時もハルは照れていてとても可愛かった。
*
暑い空気 冷たい液体
ねっとり
喉、食道、胃、流れてく
どこまでも甘く 最後に苦い
安っぽい
人工的な味
*
夏のむし暑い空気のなかで、
紙パックに入ったレモンティーはあっという間にぬるくなってしまう。
それに、
紙パックの付いた水滴の量は尋常じゃない。
すぐに手がベタベタに濡れてしまった。
昼下がり、
高校の玄関から少し奥に入った場所に私はいた。
そこは一年中、
光があまり入らず日陰になっているため、
絶好の休憩場所だ。
私は、
レモンティーの半分を一気に飲みほし、
残りの半分はなるべくゆっくり飲んでいた。
本当は一気に飲み干してもいいのだが、
もったいない。
一つ一〇〇円だって、
高校生には大金なのだ。
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