第一章 サクラ-1

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「ハルはすごいね」 「何が?」 言っている意味がよくわからないのか、 ハルはまじまじと私の顏を覗き込んだ。 それが気恥ずかしくて、 私は少し目をそらしながら言葉を続けた。 「…そんなにはっきりと人のことを好きって言えちゃうとことか、 ずっと一人の人を想ってるとことか、 すごいなって」 ハルはやっぱりよくわからないという風に首をひねった。 しかし、 褒められているのは嬉しいらしく、 少し照れながら「そうかな」と言った。 こういうやり取りを昔、 どこかでしたような気がする。 そう、 その時もハルは照れていてとても可愛かった。 * 暑い空気 冷たい液体 ねっとり 喉、食道、胃、流れてく どこまでも甘く 最後に苦い 安っぽい 人工的な味 * 夏のむし暑い空気のなかで、 紙パックに入ったレモンティーはあっという間にぬるくなってしまう。 それに、 紙パックの付いた水滴の量は尋常じゃない。 すぐに手がベタベタに濡れてしまった。 昼下がり、 高校の玄関から少し奥に入った場所に私はいた。 そこは一年中、 光があまり入らず日陰になっているため、 絶好の休憩場所だ。 私は、 レモンティーの半分を一気に飲みほし、 残りの半分はなるべくゆっくり飲んでいた。 本当は一気に飲み干してもいいのだが、 もったいない。 一つ一〇〇円だって、 高校生には大金なのだ。
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