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序章
夕方。太陽が落ちて、闇が来る時間。別名、黄昏時。
太陽がオレンジ色になり、世界をも色づける。
風が静かに撫でて、風までも夕日と化す。
「さみしいなんて、思わないで欲しいな」
誰?
「こんばんは。いや、おはよう・・・というべきかな?」
オレンジ色に染まった世界に似合わない、深い深い黒い姿。
静かさは同じなのに、濃さが違う。
目の前には黒猫がいた。
「太陽が落ちて、代わりに月が昇る。朝から、夜へ変わる。表の世界と裏の世界の狭間。私たち闇の住人にとっては、夜になることは朝になるのと同じ」
黒猫は歩きながら喋る。足音を立てずに。
音という点と点を結んで、暗闇という音色を足して、声を紡ぐ。
気をしっかり持たないと、引きずり込まれそうになる。
「そんなにかまえないでよ。私はただの案内人」
黒猫は。微笑んで、微笑む。
夕日は、どんどん沈んでいく。まるで、黒猫に引きずり込まれるかのように。
夕日が沈む代わりに影が伸びる。
もうすぐ・・・夜が来る。
序章 「鏡面世界」
「どうやら、きちんと言葉は届いているようだね」
黒猫は嬉しそうに尻尾を揺らす。
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