第一話

15/28
前へ
/81ページ
次へ
 ――三日前――    一年の中で一番昼が長く、太陽の高度が最も高くなる夏至は毎年一度、訪れるのだから、珍しくもなんともない。  けれど、今年の夏至は一味も二味も違う。  何故なら、夏至・十三日の金曜日・満月という三つの条件を満たした、神秘的な赤い光を放つ「ハニームーン」と呼ばれる珍しい月が見られるのだから。  ハネムーンを想像させるハニームーンは、その発音だけでもどこか幸せを運んできそうな月だけれど、これを日本語にすると、蜜月。  これは「親密な関係」を意味する。  まるで愛し合う者たちの為のロマンティックな天体ショー。  そんな奇跡的な月を恋人と一緒に眺めたいというのが女心。  ここにもまた、そんな恋する乙女が一人いた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加