第一話

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「ウグッオウプッ……ゴックン」  勢いよく口内に入ってきた硬い球体のようなものは、そのまま喉の奥へと転がり込み、乙川は思わず呑み込んでしまった。 「あわわわ。お、乙川さん。は、早く。早く吐き出そう!」  急いで飛び上がった面堂が、腰を折り曲げて苦しそうに咳き込む彼女の背中をさすっていると、あちこちから、「いたっ」「うぐっ」「誰だよ! 石を投げているヤツはっ」という声があがる。  誰かが石か何かを投げているらしく、乙川もその被害にあったようだ。  多くの人が集まる場所では、時々嫌がらせをする輩が現れるもの。  辺りを見渡すと、頭をさすったり、顔を押さえたり、乙川と同じように口の中に入った固形物を出そうとえづいている人の姿がちらほら見える。  悪戯とはいえ、これは酷い。
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