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「えええ? お、乙川さん。も、もしかして、ぼぼ僕、臭い?」
何を勘違いしたのか、自分の匂いを嗅ぎだす面堂に、いつもなら「慌てちゃって、可愛い」とか言ってクスクス笑う彼女だが、この時ばかりは違った。
いきなりヘソの辺りから熱くなり、体の奥底からジンジンとした甘い痺れと、妙な興奮が湧き上がって来る。
「はぁ……ん」
無意識に漏れた吐息にびっくりしたのは隣にいた面堂だけではない。
口に出した張本人である乙川が一番驚き、両手で口を覆うが、体の疼きは収まらない。
それどころか、体の奥底からマグマのように熱い何かがせせり上がって来るのを、自分の意思では止められない。
『ダークゼム! あなた、私の体に何をしたの?』
打ち寄せてくる快楽の波に溺れそうになるのを理性で必死に止めて、頭の中に語り掛ける彼女に、『餌だ。餌が近くに――行くぞっ』と、答えた。
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