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もがけばもがくほど、軟体化した彼の腕が、真綿で絞めるかのように首に食い込んでいく。
顔を真っ赤にさせて呻き声をあげる彼女へと近づくのは、何もダークパスジュニアだけではない。
彼自身もまた、鼻歌を歌いながら、直視できないほどの醜く不気味な顔を彼女の顔に寄せてきた。
五つの唇がクパァ―クパァ―っと開くと、細長い舌を伸ばし、乙川の頬から滴る赤い液体をペロリと舐めた。
ザラリとした感触に背筋がゾワリとし、肌が粟立つ。
刺々しい歯がびっしりと生えた丸い口が視界に入り、雌として食われるか、餌として食われるか。
どちらにしても、助かる術のない状況に追い込まれた乙川は、この後自分の身に降りかかる出来事を想像し、瞳を潤ませた。
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