第五話

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 恐怖の象徴とも言うべき三本目の足といえば、ぐったりと股から垂れているだけで、無用の長物という名がぴったりなほど役立たずと化しており、失禁しているのか、それとも、別の何かを垂れ流しているのか、鼻にツンとくる匂いを発しながら床を濡らしていた。 「うぐ……ふっぐぅ……」  酸素が足りなくなり、目の前が真っ暗に――いいや、すでにふくよかな圧迫感のお陰で真っ暗なのだが、それ以上に深い闇へと意識が持って行かれそうなところを、最後の抵抗とばかりに胸を食い千切ろうと丸い口を開けて思いっ切り歯を立てた。  ポキポキポキンッ  硬い物が折れる音が響き渡る。 “まさか――”という思いから、彼女の体に触れると、レザースーツだと思っていたものは、超硬合金のように硬かった、  死を目前としたダークパスは全身で抵抗を試みた。
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