0人が本棚に入れています
本棚に追加
流識は銃弾を右手に持っていた。
「なぁ、おっちゃん。わっちは銃が好きじゃねぇ。なんでか分かるか?」
「とったのか、銃弾を。兄ちゃんてめぇは。」
「銃弾ってまっすぐ飛ぶだろ?だからな、その速さよりも少しだけ速い速度で横から掴めば…ほら」
「なんだ、てめぇは…」
「掴み取れちまう。握れちまうんだよ。ちと熱いがな。」
流識の手のひらには変形も何も無い銃弾が綺麗に転がっていた。
そのまま流識は地面に捨て落とすとおっちゃんに向き直った。
しっかりと、鋭く、尖って、向きそして直る。
「まぁ、零崎のスタートだな。」
すっと流識は腰を通すと背中から鎌を取り出した。
そのまま流れるように横に反転する。
「鎌ってのはいいもんさ!」
鋭く投げた鎌は軽トラの窓から入り、おっちゃんの首に横に刺さる。
うめき声もろくに出せないようで、刺さった最初だけ小さく声が出たようだ。
「おっちゃん、ダメだそれじゃ。人を殺しておいて自分は死なないなんてダメだよ。合わないんだ。帳尻が合わない。計算が合わない。わっちにも会わなかったはずだったんだ。」
ゆっくりと軽トラに歩みを進めながら零崎流識はため息をつく。
「銃なんて野暮だよ。時代は今も昔も鎌って決まってんのさ。昔から言うだろ?鎌で構ってよってさ。」
流識は自分のギャグがえらく気に入ったのかケラケラと笑いながらおっちゃんの元までやってきた。
「笑えよ、おっちゃん。わっちがせっかく十八番のギャグ出したんだからさ。」
ひゅーひゅーとかろうじて呼吸をするおっちゃんをじっと見つめても、おっちゃんは上を向いたままで流識を見てはいなかった。
「あーあ、こいつはダメだな。」
助手席のダッシュボードが開きっぱなしだった。
そこにはいくつもの手があった。綺麗に切れなかったのか腕の肉が付いているものもいくつかあった。
他は綺麗に手首から切断された手が無造作に入っていて悪臭を放っていた。
「こんなとこに銃をしまうからだよ。いざって時に取り出せんだろ?なぁ?おっちゃん?」
呼吸も絶え絶えのおっちゃんは何も答えれない。
「まぁ零崎のクライマックスさ」
そう言うと鎌の持ち手を握りしめ、おっちゃんの首を切り落とした。
噴水のように湧き出る血潮に興味も示さず、流識は稲葉村へと歩みを進めた。
「あっ、おっちゃん乗っけてくれてありがとうな!」
最初のコメントを投稿しよう!