タダだから好き

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 一人の男が、布団の中に入りながら考える。 バレンタインって最高だな、タダでチョコがもらえるなんて。 理論上、お金が無くても生活できるってことだから。 バレンタインの日は夜通し歩いて、誰かからチョコもらおうっと。 でも歩いているヤツにチョコ渡す人なんているかな、そこ一回冷静になって考えてみよう。 ……いない! 走っているヤツのほうがカッコイイから走っているヤツに渡す! じゃあ、皇居の周りを走ろうっと、バレンタインの日は。 結局世の中って足の速いヤツがモテるから、走りに走り出そう、己らしく! 走っている時に、バトンパスの要領でチョコもらえないかなぁ。 パス、パス、言って、筒状のチョコをもらって、そしてより加速していく俺。 ……カッコ良すぎかもしれない、これ。 もらった筒状のチョコを一律股に挟んでいかない限り、カッコ良すぎるかもしれない。 さすがに、一律股に挟んでいったら「一律股に挟んでいってるよ」と笑われるかもしれないけども、 一律股に挟んでいかなければ、絶対にカッコ良すぎる。 どうしよう、バトンパスのおかわりが出るかもしれない。 『一回渡したけどまた渡したい私、渡したい』が出現する可能性大だな。 バレンタインの日にハマってしまう、ずぶずぶにバレンタインの日にハマってしまう。 もうバレンタインの日以外に走りたくなくなってしまう。 じゃあもう毎日がバレンタインの日ということにすればいいか。 ”毎日がバレンタインの日高校”と書かれたタスキをかけて、未来を走り抜ければいい。 でもどうしようかな、タスキかけているとバトンでパスしづらくなるか。 タスキ状のチョコじゃないと受け取らない雰囲気出てくるか。 それは良くないなぁ、筒状のチョコのほうがおいしそうだし、じゃあタスキかけるのやめるか。 でもそれだと、どうやって毎日がバレンタインの日だということを伝えればいいのかなぁ。 やっぱりそこはもう心だよね、以心伝心だよね、分かってくれるよね、俺の走り様を見ていれば。 『この膝の曲がり具合は毎日がバレンタインの日の人だ! ラッキー!』と分かってくれるよね。 じゃあもうここの心配は全くいらない、チョコくれる人を信頼しているから、俺は。 さてと、ということはもう今日からバレンタインの日だ、よーし、皇居の周りを走るぞー、ほどよい気候になったら。
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