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バレンタインはウァレンティヌスが無念の内に死んだからこそ出来た行事だ。その過程が無ければ彼はただの一司祭! 例え寿命で亡くなったとしても、それで彼がここまで大きく祀り上げられることは、絶対にない!
『いいでしょう! 彼方で貴方がどのように彼を救うか、とくと見せて貰います──!』
瞬間、俺の身体は光に包まれ──
◇◆◇◆◇◆
「凱旋ッ!」
『おお、お帰りなさいませー』
パチパチと拍手の音。それが止むと、パキッと乾いた音。さては煎餅でも食べてやがるな。
さて、タイムスリップした俺は、天使を名乗り牢に入れられたウァレンティヌスを保護すると、機転と卑劣さ、そして割とチートな現代知識で見事にウァレンティヌスを生き長らえさせる事に成功したのだ!
「これでバレンタインは無くなった筈……!」
『なんか言いました?」
「いえ、何でも?」
シレッと何も言わなかったフリをして、追及をかわす。そう、ウァレンティヌスは死ななかったのだから、もうバレンタインは無くなった筈だ。
『願いは叶いましたかー? 叶ったならもっと沢山信仰してもいいのよ』
「ええ、勿論っ!」
『やったー! まさに情けは人の為ならず! いや、神の為ならず、ですかねぇ?』
「いや、俺に聞かれても……」
そんな惚けた会話を、少しして。
『じゃあ、もしかしたらまた今度? また祈られたら来ますんで、さよならー!』
やがて捨て台詞と共に、声は聞こえなくなった。
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