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 球技大会の今日は制服で学校に来るひとも少なく、いつもと違って浮かれた日だった。わたしもジャージにパーカで登校したけど、どうせ競技には出ないので、どうやって時間をつぶそうか考えていた。 「今日マジで勝つからね、応援してね」  アンナとメグがガッツポーズを作って笑った。がんばってね、とわたしは笑顔を返す。ほんとにがんばってほしいと思ってる。でも、心の底はわからない。しょせん校内レクだから、二人が負けてもわたしは残念に思わないだろう。  体育館を離れて校舎の自販機に向かった。球技大会の日はすぐに飲み物が売り切れる。どうせ喉が渇くような運動しないけど、なんとなくジュースが飲みたくなって、まだ売り切れのない朝の自販機の前に立った。  オレンジジュースをチョイス。おまえって、見かけによらずお子さま趣味だよな―あのひとの言葉を思いだす。  果汁四十パーセントの甘ったるいジュースは、舌に絡みついてあまりおいしくなかった。それでも、ストローを吸いつづけながら廊下を歩く。 「あれ、なにしてんの」  ひとけのない二階に上がろうとしたら、階段で声をかけられた。 「そっちこそ、なにしてんの?」 「俺? 散歩だよ、学校探険」 「学校探険ってなつかしい響きなんですけど」  わたしが言うと、リュウは笑った。リュウは小・中・高と同じ学校で、普段から廊下で会うと結構長話になった。 「おまえ、競技出ないの?」 「出ない」 「まあ、そうだろうな」  リュウはわたしの足元に目をやって、「あ、サンダル、クロックス」と言った。 「クロックスじゃないよ、百均のニセモノ」 「違うのかよ。おそろいだと思ったのに」  リュウは自分のサンダルのロゴを見せびらかして笑った。
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