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「あんた、出ないの? 今日」
「俺もさ、最近ダメで」
「なにがダメなわけ?」
「貧血。激しい運動禁止だって」
「マジで? 似合わねー」
「黙れ、ナナ」
「なんであんたが貧血になるわけ」
「レオに彼女できて、ショックすぎて?」
「ちょっと待って」
わたしはオレンジジュースを吸うのをやめた。
「なにそれ」
「かわいい子だってさ。あいつ、やりやがった」
「レオがそう言ったの?」
「じゃなくて、噂」
「噂じゃわかんなくない?」
そう言ってから、ああ、わたしムキになってる、と思った。なんであいつのことで、わたしがムキにならなきゃなんないんだよ。
「おまえはそう思いたくないのかもしんないけどさ」
リュウはわたしの手からジュースを奪って、同じストローで勝手に飲みほして言った。「でも、結構みんな言ってるし」
「べつに、そう思いたくなくない」
わたしはジュースを奪い返してリュウを睨む。
携帯を開いて、レオのブログにアクセスした。どきどきしながら覗いたけど、更新は一週間前で止まっていた。拍子抜けしてがっかりする。
ほんとうは、どこかで会おうってメールしたい。中学の卒業以来一年半会っていないあのひとと、一度でいいから会いたい―ほんとは。でも、そんなこと言えない。
もしわたしたちが女の子同士だったら、こんなふうに迷わずにしょっちゅう二人で会えたかな。毎日学校で話していたのに卒業したら数ヶ月に一度しかメールしないなんて、そんなふうにはならなかったかな。
着メロが鳴った。電話だった。
「ナナー? ウチのクラスのバレー始まるから、観に来ない?」
「行く、どこ? 体育館?」
「そうそう、Aコート。なんか、クラスの子ほとんど集まってるから、一応電話した」
「助かる。そっち行くね」
愛想よく言って電話を切った。二分後には、わたしはクラスメイト四十人のなかに座っているだろう。会いたいひとには、いちばん会えない。
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