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「ここは職場だ」
「その通りよ。そして、私は社長。口を開けなさい」
社長のミズキは、銃口を山形の口に強引にねじ込むと、
「死ね」
躊躇いなく引き金を引いた。
「パン」という破裂音と共に、山形の口から甘い香りが漂い始めた。
「これ・・・」
「チョコよ。ハッピーバレンタインデー♪で、山形くんは誰を選ぶつもり?」
社長のミズキは自信満々の笑みを浮かべて、拳銃の形をしたチョコが出てくるオモチャをくるくる回している。
「あー・・・・、美咲くんだな」
「え?」
ミズキと愛子を尻目に目を潤まして喜ぶ美咲、
「課ちょ、いや、洋平さん、ありがとうございます。」
選ばれたことで調子に乗った美咲は、どさくさに紛れて名前で呼んでいた。
「なぜ?納得いかないわ」
不満を訴える愛子とミズキに、山形は一言、
「奇抜過ぎ」
「ぷぷっ」二人を嘲笑うかのように満面の笑みで美咲は山形に駆け寄る。が、それを制して山形は言った。
「新作チョコの企画会議は二ヶ月前のはずだ」
三人の顔がみるみる青ざめる。額の血管を浮き上がらせた怒りの山形、製菓会社の一室に怒号が響いた。
「提案が遅すぎる。仕事を舐めるなよっ」
仕事の鬼の山形が吠えた。
「・・・すみませんでした」
派手に怒られた既婚女性三人は、愛する旦那へのチョコレートを持って定時に帰っていった。
「新商品の提案、ダメだったな・・・、テヘペロ」
反省もせずそう言いながら。
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