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夕飯は即席ラーメンを食べて、交代で風呂に入り、熱い体で並んでテレビの前でくつろぐ。まるで学生に返った気分で貴光は目に見えて弾んでいたし、智冬も鼻歌交じりにディスクをセットしていたので、多少温度差があったとしても、好きな映画を前に同じ気持でいたに違いない。歳を重ねても、やはり男たるものビーム兵器やワープホール、近未来的な剣戟のチャンバラには目がない。特に貴光は命を賭して己の戦艦を導く司令官のキャラクターに感情移入したようで、おそらく本人は気付いていないであろうが、何度も小さく歓声を上げてはご機嫌な調子で体を揺らしていた。そのうえ、ヒロイン役の美しい女優がトップレスでベッドに横たわっていたときには明らかに動揺していて、ひそかに智冬の笑いを誘っていた。
「どうする?」
シン、とした一瞬の沈黙の間、キシキシとする金色の髪を手櫛でいじっていると、視線も合わさずそう問われた。ほんのわずかに貴光の三白眼気味の瞳が丸くなった。
「どうする、って?」
「このまま泊まるか?」
そっぽを向いていた智冬の視線が合わさり、胸がざわめいた。深夜まで遊んで、そのまま友人宅に泊めてもらうなんてざらにある。貴光と智冬だって例外ではなく、最近は久しくそういったことはなかったけれど学生の頃は何度だって泊まりあった。それなのに、どうしてだか貴光の胸は穏やかではない。
最初に思ったのは、“どう言えば、妙な空気にならずに断れるだろうか”だった。お互い一人暮らしで、遠慮することはない。むしろ断る理由のない現在、拒んでしまえば察する理由は“一緒にいたくない”、その一つに収束される。
長い襟足の付近を掻いてンーとあいまいに唸る貴光を、生気の感じられない黒い瞳が射貫く。たじろぎながら、上目で智冬の顔色を窺う。
「……泊まっても、いいの?」
「なんで? いいよ。ベッドはお前が使えよ。昔っから風邪引きやすいだろ」
「ん」
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