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穢してやった。汚してやった。髪の毛一つ落ちていないシーツを、やわらかく良い香りのするシーツを自分の汚らしい唾液で。
熱い布地がじんわりと湿気を帯びてきたころ、ふいにクッと智冬の腕に力が込められた。性的刺激にざわめく膀胱が圧迫される。
「貴光?」
心臓に氷水を浴びせられたような気がした。目を見開き、背後の気配を震え戦きながら探る。自慰がバレた。淫魔に憑かれていたとしか思えぬ病的なまでの高揚はどこへやら、またいつもの情けなさに苛まれて不甲斐なさに涙が溢れて止まらなくなる。
「具合でも悪いのか?」
「ヒッ……、ち、ちが」
「熱いな。熱がありそうだ」
熱い掌が額に押し当てられる。
バレていない。バレていない。安堵とはっきりとした後悔が綯交ぜとなり、体が勝手に震えだす。
(恥ずかしい、恥ずかしい、俺はどうしてこんな……)
「大丈夫か?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」
大丈夫だと告げる声音がすでに平気とは程遠く、智冬の手のひらにべったりと付いてしまった汗を恥じた。感情の読めない視線だけで状態を推し量られる。額からするりと退ける手のひらの軌跡のついでに、赤い眦を濡らす涙を拭われてそっぽを向いた。涙には気付かれている。熱くせわしない呼吸は、熱のためだと思われているだろうか。
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