【2】星野智冬の憐憫

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 そんな内気な空想に沈んでいた日々だったけれど、眺めているだけで十分だと思いつつも一度だけ誕生日に思い切って貴光を遊びに誘ったことがあった。誰からも祝われて、気が大きくなっていたせいで羽目を外してしまったのだ。 「迫子くん、今日、一緒に帰ってもいい?」  平素のポーカーフェイスで、橙色に染まる教室で声をかける智冬の瞳はひそかにちらちらと揺らいでいた。 「あっ、ごめん。今日は西谷たちと帰るから。ごめんな! また今度」  それと、誕生日おめでとう。慌てて付け加えられたその言葉と、にこやかにランドセルを引き寄せて軽やかに身を翻すその身のこなしに何も返せず、ただ彼が出て行った扉をいつまでも目で追った。 ――――もしかしてこれが、〝寂しい”ってこと?  胸に手を当てる。冷ややかではあるが、それだけではない。とげとげとしていて、それなのに何もない。からっぽで、……やはり冷ややかだ。こんなにも燃えるように赤い陽が差しているのに。  しかし、貴光は持ち前の明るさでクラスの中心的存在として君臨したが、屈託がないが故に時折のぞかせてしまう無神経さ――――、空気の読めない発言の多さに、その旺盛もすぐに崩壊してしまった。     
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