【2】星野智冬の憐憫

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 ひとりぼっちでぽつんと佇む貴光の姿をいつも通り少し離れたところから眺める。小学生ながらに、ひどく哀れで、それでいて胸をくすぐる愛情を感じた。いつしか感じた〝寂しい”冷たさとは正反対の、ぬくぬくとした春がからっぽなこころに芽生える。  以前よりめらめらと燃える瞳の炎の熱さに気付いたのか、視線の先の貴光はくるりと振り返り、智冬とは違い不安げにゆらめく湖面の瞳をすがるようにしてへしゃげさせ、わななく赤い唇を開いた。 「星野くん、僕たちは友達だよね――――?」  智冬はその瞬間、世界の時間が止まったような気がした。ごくんと喉を鳴らし、勝手に上がる口角のままに、今までしたこともないような笑顔を形作る。  これが智冬の根幹。智冬のすべて。〝寂しさ”という未知の扉を潜る対価として〟友”という宝物を齎された少年は、この瞬間から再生する。   *   *   *  隣で眠る貴光がせわしない呼吸をしていることに気が付いた。押し込めたような息が、時折喉でグッと詰まる。 (貴光……)  寝ている間に無意識で抱きしめていたことにも驚いたが、腕の中の熱すぎる体温にもっと驚いた。そして――、彼が自身の腕の中で自慰をしていることにも。 「ち、ふ……」 (俺の名前を、呼んだ……?) 「はぅ、……ん、んっ」     
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