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いつも淡々ときっぱり意見を述べる智冬が、珍しく言い淀んでいる。
「ふぅん……」
「――――この後、どうする? 本屋か、カラオケか……。どこに行きたい?」
「あぁ~、考えてなかった。智冬は? 何か用事ねえの?」
「本屋に寄れたらうれしい、かも」
「おう、いいじゃん。行こうぜ! 鉄拳王の新刊出てねえかなー」
軽く返しながら、はたと目を落としていたスマホから視線を上げると、ゆるく頬杖を突いて景色を眺めていた智冬が怪訝に首を傾げた。
「どうした」
「あ、いや。……出歩くなら、もう少しちゃんとした服を着てきたほうがよかったか……?」
コーヒーショップで軽食を済ませた後は、いつもの通り智冬が一人で暮らしているアパートでゴロゴロとゲームをしたり、テレビを眺めるのものだとばかり勝手に想像していたので、適当なパーカーとスウェット素材のズボンで出かけてきたのだ。靴なんてドン・キホーテで適当に買った派手な色彩の健康スリッパだし、服も寝巻と兼用にしているシャツだ。袖口に毛玉が浮いている。少し伸び気味の髪も、白に近い金色に脱色しているせいで、どこからどう見ても寝起きのヤンキーのそれだ。
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