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「高梨幸太……君、ちょっ……と待って」
途切れ途切れではあるが確かに名前を呼ばれた気がして声のした方を見ると、屋上に1人の男子生徒がいて必死にこっちに手を振っている。
「幸太知り合いか?」
「まさか。誰だろ?」
そう思ってたら男子生徒が手を振るのをやめ、両手を後ろに組んだ。そしてさらに大声で叫んだ。
「高梨幸太君、僕と付き合って下さい。絶対に幸せにします」
ペコリとお辞儀する姿をぼんやりと眺める。何を言われたのか理解したくなくて思考がストップし、目の前が真っ黒になった。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫な訳がない。道弥、俺今夢を見てるんだよな?」
そうだ、夢に違いない。男に告白されるなんてあり得ない。それもこんなに人が居るところで……。
「キャー告白よ。高梨幸太君って誰?」
近くにいた女子が騒ぎだした。
「幸太、残念だがこれは現実だ。約束だから三好軒のラーメン奢るよ」
ラーメン?そうだ告白されたらラーメンを奢ってもらう約束をした。じゃあこれはやはり現実……。
まさか三好軒のラーメンがちっとも嬉しくない日が来るなんて思わなかった。
「ねえ、あの人じゃない?高梨幸太君」
「え、どの人?」
周りが高梨幸太を探し出したので、怖くなって一目散に逃げ出した。
お願いだ、誰か夢だと言ってくれ。
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