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それからの日々
葛城に告白されて変わった事、それは。
「高梨君、おはよう」「高梨君、気をつけて」
毎日繰り返される挨拶だけだった。
ただ普通と違うのは、校舎から門に向かって大声で挨拶されるのでみんなに聞こえて恥ずかしい事だ。
初めて言われたのはバレンタインデーの放課後で、ビックリした俺はすぐに引き返して文句を言った。
「おい、もうああいうの止めるって言ってたよな?」
「ああいうの?」
「だから、みんなに聞こえるように言うのは止めて欲しいんだ」
どんな意図でこんなことをするのかさっぱり分からないが、すごく迷惑だ。なのに葛城はどうして文句を言われるのか分からないみたいで、首を傾げている。
「挨拶しちゃいけなかったの?」
「そうじゃなくて、挨拶ならもっと近くでやればいいだろ」
「だって高梨君とは教室が離れてるから……」
まあ確かに言われてみればそうだ。俺達の学校は1学年10クラスあり、校舎は北、南の2つに別れている。各学年の1から5組までは南校舎6から10組までは北校舎で、学年は1年が3階2年が2階、3年が1階の教室を使っている。つまり俺の1年2組は南校舎3階にあり、葛城の7組は北校舎3階でなかなか顔を合わせられない。
俺達が今いるのは北と南の校舎を繋ぐ2階の渡り廊下で、ここからは校門がよく見える。葛城はこの渡り廊下から俺にバイバイと手を振ったんだ。
「だからといってあんな大声で……」
「おーい、幸太、カラオケ行こうぜー」
突然聞こえた大声に驚いて見下ろすと、校門に5人くらいのクラスメイトがいて俺に手を振っていた。
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