それからの日々

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このままお母さんにこの紙袋を渡して帰ってしまおうか……そんな考えが(よぎ)る。 だが、お母さんの言葉でそんな考えは吹き飛んだ。 「大丈夫よ、あの子もすごく喜ぶわ。今日は高梨君に会えないって落ち込んでたから。もちろんきっちりマスクさせるし、部屋の換気も加湿もしっかりするから心配しないでね」 「………はい」 なんとなく言い方が葛城に似ていてクスッと笑うと、高梨君って結構可愛いのねって言われてしまった。 いや、俺は全く可愛くないから。 玄関を入るとお母さんの趣味なのか、中も可愛かった。この家でお菓子を作る葛城が、容易に想像できる。 2階に上がりすぐの部屋のドアをお母さんが軽くノックすると、中から「はい」と力のない返事が聞こえた。 「倭、高梨君が来てくれてるわよ。あなたの大好きな高梨君よ。うつしちゃいけないからマスクと換気して」 「高梨君、え、ちょっと待って」 部屋の中でバタバタと音がしてからそっと控えめにドアが開いた。
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