それからの日々

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すると葛城が目をうるうる潤ませてコクコクうなづいた。マスクで半分顔が隠れているにも関わらず、目だけでも表情って結構分かるんだな。そういや(ことわざ)にも『目は口ほどに物を言う』ってあったな。 「良かった。今朝挨拶がなかったから、どうしたんだろうって思ってたんだ」 「もしかして、寂しいって思ってくれた?」 「…………まあ」 葛城の目が嬉しそうに輝いた。あれ、ちょっと待って。これはまずいんじゃないかな。全然寂しくなかったって言うべきだったのかも。でも実際ちょっと寂しいって思っちゃったんだから仕方ないよな。 「ごめんね。明日はちょっと無理だけど、明後日からはまた挨拶するからね。嫌がられてるんだと思ってたから、なんかすごく嬉しい」 「いや、ちょっと待って、そうじゃなくて……まあいいか、因みに明後日は土曜日だけどな」 「…………」 あれ、落ち込んだ?なんか葛城って表情がコロコロ変わって面白いな。 「それと遅くなったけど、ケーキありがとう。ガトーショコラって言うのかな、あんなケーキ初めて食べたんだけどすごくうまかった」 「本当に?」 「本当だ。1日で食べきれなかったから2日に分けて食べた。母親にもあげたら店で売ってるみたいだって言ってた」 「お母さんも?」 そう。母親がケーキの箱をみてニヤニヤしながら近づいてきて誰にもらったのか聞いてきたから、「男だよ。入試の時に助けてもらったお礼だって」と言ったらすごくガッカリしたのに、ケーキを見た途端にテンションが上がって美味しいを連発していた。 「うん」 葛城が更に嬉しそうに笑い、その笑顔……目だけしか見えないが……を見ていると、俺まで嬉しくなってきた。
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