それからの日々

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**** 唐突だけど、小学生の頃の俺の夢は建築家になることだった。小さな事務所を構えて、出来るだけ依頼主の希望に添うような家を建てたかった。 きっかけは家族と一緒に見たテレビ番組だった。家が住み辛くて困っている人が番組に応募して建築士の人がリフォームしてくれるという内容なんだけど、まず驚いたのはすごい家に住んでる人がこんなに沢山いるんだなということだった。 落ちそうになりながら洗濯物を干したり、お風呂に行くのに雨に濡れたり、階段が急すぎて落ちたりと、相談者はみんなすごく困りながらも我慢して生活していた。 そんな家を一級建築士の人が訪れ、住人の希望を聞き、それを取り入れながらも斬新なリフォームをして問題を解決するのには毎回感動を覚えた。新しい家を見た時の住人の笑顔がすごく素敵で、俺もこんな風に人に喜びを与える仕事がしたいと思ったんだ。 建築家になる方法は分からなかったが、たぶん勉強は必要なんだろうと思った。大学か専門学校に行って資格試験に合格しないとダメだから。だから、俺がまずやったのは勉強を頑張ることだった。 次に思ったのは、その番組に出てくる一級建築士の人の想像力がとても豊かで発想が素晴らしく、みんな器用だということだ。 予算がないので彼らは廃材や以前使っていた材料を再利用していた。自らそれを作業場に持ち込み、機械を借りて作業をし、思い描くものに作り替えていた。それには今までの経験だけじゃなく、常にアンテナをはって情報を取り入れることが大事だと感じた。 友達の家の造りに興味を覚えたのはこの頃だ。
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