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「幸太、なんかいいことあった?」
「何もないけど………なんで?」
「いや、笑ってるから」
教室に入ると道弥に指摘された。
俺、笑ってるのか?
ペタペタと顔を触ってみてもいつもと変わらない気がする。
「笑ってないぞ」
「いや、笑うっていうかニコニコしてるっていうか、とにかくいつもより機嫌がいい感じがする」
機嫌がいいと言われてもなぁ。小遣いも成績も上がってないし、誉められたり表彰されたりもないし、別にいいことなんかなかったんだけど……。
首を傾げていると、道弥が何かを思い出したように「あっ」と呟いた。
「あれじゃないか、葛城の挨拶」
「葛城の挨拶?」
「そう、幸太君呼び。あれが嬉しくてニコニコしてるんじゃない?」
「バ、バカなこと言うなよ。何で俺がそんな事でニコニコしないといけないんだよ」
道弥に食って掛かるが、いつもと同じようにさらりとかわされる。
「さあ、俺には分からないよ」
「分からないなら……」
「でも、それしか考えられない」
きっぱりと言い切られて、反論出来なかった。
く━━っ。成績なら俺の方が上なのに、何で口ではいつも負けるんだろう。悔しい。
………でも、道弥の言う通りかもしれない。
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