それからの日々

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その後の事は思い出したくもない。 チャイムに助けられた俺は興味津々なクラスメイトの視線に負けないよう前だけを向き、これ以上はないくらいの集中力で授業を受けた。休み時間になると脱兎のごとくトイレに逃げ込み、個室で時間を潰す。 道弥は全く当てにならない。1時間目の休み時間に俺と入れ替わるように教室に入ってきた舞ちゃんに責められて、それからは休み時間の度に隣のクラスに行って謝罪しているらしい。 少しだけ悪いなとは思うが、まあ自業自得だよな。というかそれをいうなら俺もそうか。あんなことをした自業自得でこうなってるんだよな。 だけど何でキスなんかしようと思ったんだろう。 道弥に笑われてカッとして、ちょっと驚かせてやろうとは思ったのは確かだ。自慢じゃないが俺にはキスの経験なんてない。そんな俺が参考にしたのは、母親が毎週見ているドラマだ。人気のイケメン俳優が昨日まさにヒロインの女の子にキスをしかけていた。その時に言っていた台詞が「目をつぶれ」だったんだ。 まさか道弥が抵抗しないなんて思わなかったし、葛城が来るなんて考えもしなかった。 とにかく1日逃げ切れば何とかなるだろうという淡い期待を抱いていたが。 4時間目が終わって教室を出た俺は、廊下で待ち構えていた葛城に捕まってしまったんだ。 「か、葛城、授業は?」 「ちゃんと受けてきたよ。最後の10分は腹痛で抜けたけどね」 「…………」 体格差からか力で葛城には敵わないみたいで、ズルズルと引きずられて連れてこられた先は家庭科室だった。 鍵を差し込んでドアを開けた葛城は俺を中に入れ、自分も入ると中から鍵をかけてしまった。 ━━怖い。
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