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葛城は、舞ちゃんみたいに俺を責めるでもなく力が抜けたように椅子に座りこんだ。
「はぁ……緊張した」
「どうしたんだ?」
「うん。嘘ついて授業抜けたの初めてで……いや嘘の筈が緊張し過ぎて本当にお腹痛くなってきたから結果的には嘘ではないんだけど。脂汗出て来て先生の方から保健室に行けって言われたしね」
葛城も案外真面目なんだよな。チャイムが鳴って悔しそうに教室に帰って行ったからな。
「それに、幸太君に会うのも怖くて。今朝はああいったけど、二人が本当に付き合ってたらどうしようかと思って………」
もう何なんだよ。もしかしてさっきの怖い顔は腹痛のせいなのか?俺はてっきり殴られるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたのに。
………でも、こいつをこんなにしたのは俺の曖昧な態度のせいだよな。
「葛城ごめん」
「えっ、やっぱり森下と……」
「違うから。道弥とは付き合ってないから」
「……良かった。じゃあ何で謝るの?」
「それは………俺の曖昧な態度のせいでお前を傷つけたからだよ」
俺の言葉の意味を理解できなかったのか、葛城が首を捻っている。
「えっと、どういう事?」
「……まず、俺は今まで恋をしたことがないんだ」
「うん、それで?」
「だから想像でしかないんだけど、恋するなら相手は女の子で、その人を見たらドキドキするんじゃないかなと思うんだよ」
「……うん」
「だから、葛城が男である時点で対象外だし、ドキドキしないからやっぱり恋じゃないと思うんだ」
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