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母さんを見送った後、父さんと二人で朝食の続きを食べた。
「なぁ、幸太。もしおじいちゃんの足がこのまま使えなくなったら、父さんが継ぐかもしれない」
え………。
起き抜けでぼんやりしていた頭が、やっと回り始めた。
父さんがみかん農家を継ぐ?それって………。
「引っ越すってことだよね?」
「まあ、そうなるな。ごめんな」
「あ、別に…………」
いつかこんな日が来るのは分かってたが、まさかこんなに早いとは思わなかった。
父さんはみかん農家の長男として生まれた。その頃は祖父の両親、祖父と祖母の4人でみかんの世話をしていたらしい。
父はみかん農家の仕事が大好きで、将来は家業を継ぐつもりでいた。けれど、高校生の時祖父に反対されたらしいんだ。
年々みかんの消費が減りみかん農家の収入は減る一方だ。だから、もっと稼げる仕事につけと言われたらしい。
本当にその通りで父は渋々祖父の言葉に頷いた。
それで父は思いきって田舎を出て、こっちの大学に進学し就職した。それから母さんと社内恋愛の末に結婚し俺が生まれたんだ。
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