青天の霹靂

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夏休みに家族旅行に行く度に父さんが言ってた。 「生き物相手の農家は休みがないからこんな風に家族全員で旅行なんかできない。だから、サラリーマンになって良かった」 けど、俺には何故かみかん農家になりたかったって言ってるように聞こえたんだ。 冬に実家からみかんが届くと、「やっぱりこのみかんが一番美味しいな」と言う父さんはすごく嬉しそうだった。 たぶん父さんの中ではずっとみかん農家になる夢が諦められなかったんだろう。車で3時間もかかる距離にも関わらず、頻繁に実家に手伝いに帰っていたから。祖母が亡くなってからは特に。 母さんは父さんの夢を応援しているのか、一言も文句を言わずに一緒に手伝いに行っていた。こっそりみかんの育て方の本を読んだりもしていた。 そんな2人を見てきたからか、いつかは父さんがみかん農家を継ぐんだろうなとは思っていた。けれどそれはもっと後だと勝手に思い込んでいたんだ。 そうか、今か。 正直転校はしたくない。友達とも離れたくないし、そこそこ都会なこの町で育ったので一番近くのコンビニまで車で10分以上もかかる田舎に住む自信もない。 それに、葛城………。 頭の中ににあいつが浮かんできて、もう会えなくなると思うと泣きそうになる。 キスをしてから前よりは仲良く過ごしているが、俺達はまだ付き合ってはいない。キスもあれ以来していない。 友達以上恋人未満。それが俺達の今の関係。 俺はそれを心地よく感じていた。
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