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毎朝改札を出ると葛城を探すのが日課になってしまった。
いた。
背が高いので分かりやすい。
電車通学じゃないのに、葛城は毎朝駅までオレを迎えに来てくれるようになった。
笑顔で手を振る葛城に俺も笑顔を返す。今日も幸せだ。
「幸太君おはよう」
「葛城、おはよう」
「もう、倭って呼んでよ」
「まあ、その内な」
ここ数日繰り返されているこの挨拶だが、口にした途端に少しだけちくりと胸が痛んだ。
「幸太君、どうかした?」
「何で?」
「なんか元気がなさそうだから」
どうして分かるんだろうな。親友の道弥は全く気づいてなかったのに。
あれ、そういえば道弥は?
振り返ると、ブスッとした表情の道弥が俺のすぐ後ろにいた。
「どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないよ。毎日毎日2人の世界に入っちゃって俺なんか完全無視だろ。いい加減ブスくれるよ」
あれ、そうだったかな?葛城と目を合わせると、彼も初めて気づいたみたいに驚いている。
「悪かったな」
「ごめん、森下」
「いや、謝ってもらうほどじゃないんだけど……。俺の方が幸太より先に知り合ったのに、葛城俺には挨拶もしないし」
そういえば校舎から叫んでた時にも、隣に道弥がいたのに俺にだけに言ってたな。
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