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夜にならないと母親から連絡が入らないと分かってはいるが、落ち着かなくて休み時間になる度にメールをチェックしてしていた。
「幸太が携帯ばかり気にしてるなんて珍しいな?」
「あ、うん、ちょっとな」
普段と違う行動が引っ掛かったのか、道弥が眉をひそめる。
「何かあった?」
「いや、新しいゲームを入れたから気になるだけだよ」
こんな嘘をつかずに道弥にはちゃんと言った方がいいのに、なんで隠してしまうんだろう。たぶん最後までこんな風に普通に接して欲しいんだろうな。でないと辛くて泣いてしまいそうだから。
「それならいいけど。今日舞ちゃんとデートなんだけど………」
「ああ、了解。楽しんで来いよ」
高校生なんだから一人で帰るのなんて平気なのに、道弥はいつも申し訳なさそうな顔をする。
「そう言えば、三好軒のラーメンまだおごってもらってなかったな」
「忘れてた。近い内に行こう」
三好軒は道弥の家の近くにある小さなラーメン屋だ。テーブル席が4つとカウンターの小さな店だけど、ラーメンと餃子が美味くていつも満席だ。けれど客のほとんどが食べたらすぐに帰るので回転率が良く、待たなくていいところも気に入っている。
引っ越す前にもう一度食べとかないとな。
「道弥君、帰れる?」
教室の入り口で舞ちゃんが呼ぶと、道弥が嬉しそうに頷いた。
彼女を取っ替え引っ替えしていた頃とは全く違ってすごく幸せそうだ。
「じゃあ、俺行くわ」
「うん。また明日な」
また明日か。この挨拶はいつまで出来るんだろう。
あー、止め止め、暗いのは性に合わない。それより夕飯何にしよう。出来れば温かい物が食べたいな。
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