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そもそものはじまり
校舎を出た途端に肌が凍るように冷えていく。寒いのが苦手な俺にとっては2月は大嫌いな月だが、それも今年までだ。
なぜなら、明日はバレンタインデー。1年に1度だけ女の子が好きな人に気持ちを伝えることが出来る大切な日だ。残念ながら俺はこれまでその恩恵にあやかる事が出来なかったが、高校生になった今年こそは彼女が出来る気がするんだ。
「確かクリスマスの時もそんな事言ってなかったか?」
「さあ………去年の事なんか覚えてない」
「まだ2ヶ月も経ってないのになぁ」
「うるさいぞ。じゃあ俺が告白されたら三好軒のラーメンおごりな」
「オッケー。告白されたらな」
くーっ腹立つ。隣を歩く親友の道弥をキッと睨むが、慣れたもので俺の不満など華麗にスルーする。背が高く顔も頭も性格もよい道弥は昔からモテモテだった。だけど、夏に舞ちゃんという彼女が出来てからは舞ちゃん一筋だ。
運がいいことに去年大人気だった先輩も卒業してしまったので、この学校にはみんなが騒ぐくらいカッコいい生徒はもう残っていない。
だから、俺にも可能性があるはずなんだ。
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