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結菜の入院は2泊だった。 救急車で運ばれた次の日に落ち着いて再度検査と治療をして、その翌日の午前中には自宅療養で十分という事で退院した。 退院の日は母親が車で迎えに来た。 結菜は怪我が少し深かった事もあり、それに何よりも、ショックと恥ずかしさで学校に行きにくく、その次の一週間、学校を休んだ。 学校に行ったら、結菜が隆にチョコレートを渡そうとした事、それを受け取ってもらえなかった事が広まっているのではないだろうか・・・。不安と共に、12日ぶりに学校へ行ったが、そのような話は広まっていなかった。 ただ、土手から落ちた話だけが広まっていた。 「バレンタインデーにドジだよねぇ。土手から落ちるなんて。怪我したらチョコレート渡せないじゃん。でも、直ぐに救急車呼んでもらえて良かったね。親切な人だよね。」 隆の話が出てこない。救急車を呼んだのが隆だとは誰にも伝わってなかった。 隆君、誰にも何も言っていないんだ、そう思った。 でも、お礼を言いに行った方がいいのだろうか。本当なら助けてくれたのだから絶対に行くべきだ。が、行きにくかった。 玲奈に相談したら、誰にも言っていないという隆の誠意に甘えて、たまたま会ったら、その時にお礼を言えば良いのではないか、と言われそうしようと思った。 でも、結局、会えないまま、悶々とした2週間過ぎた。 3月14日 ホワイトデーの日がやって来た。 昼休み、告白で成功したであろう何人かの女の子の所に男子生徒がホワイトデーのプレゼントを持ってきていた。 そのたび、周りに少し冷やかされていたが、嬉しそうだった。 それを見ながら結菜は、バレンタインデーとかホワイトデー、それにクリスマスなどは一生自分には無縁なのだろうな、と諦めとも悟りとも思える境地になっていた。 だから、以前はうらやましいと思ったが、今は、純粋に「良かったね」と思える。
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