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まだ、玲菜なら許せるけど。いや隆と玲菜ならとてもお似合いだろうな。
自分は顔も性格も父親似だ。父親には悪いが、女として生まれて不公平だと思っていた。
「玲奈もさっきまでいたのよ。心配してたけど、検査結果でなんとも無いと判って、安心して帰ったわ」
玲奈に何て報告しよう、でも、玲奈ならきっと励ましてくれると思いながら、ふと、病室の棚の上に、隆に渡したチョコレートが置いてあるのに気が付いた。
その視線に気がつき、母親も棚の方を見た。
「あら、あなた、まだ渡してなかったの? こんなに汚れたら、渡せないわねぇ」
ここにあると言う事は、隆が置いていったのか。結局受け取ってくれなかったのか・・・。
さらに落ち込んだ。あのまま死んでしまえたら良かったのに・・・・。
結菜は、何も言わずに布団をかぶって横になった。
何も知らない母親は「まあ、横になって休めば直るよ」と気楽に言ったが、この楽天的な女性は娘が身体の傷で落ち込んでいるのか心の傷で落ち込んでいるのか、きっと判らないだろうな、と考えた。おそらく美人の母親は、昔から失恋という言葉を知らないに違いない。
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