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玄関のチャイムを鳴らすと、ほとんど待つことなくそれは開けられた。
「おはよう、花菜。誕生日おめでとう」
口元を緩めた笑顔は、思わず鼻血を吹き出しそうな程、爽やかでかっこいい。
「侑李、おはよう。ありがとう」
「入って」
「うん」
いつもは何も置かれていない玄関に薔薇が飾られていることに気付いて、その気遣いにとくんと心臓が跳ねた。
靴を脱ぎ、侑李に続いてリビングへと入る。
部屋だって、普段はあまり物のないシンプルなものなのに、今日はあちらこちらに花が飾ってあった。
「わ、綺麗な花」
「花菜の誕生日は、やっぱりいっぱいの花に囲まれていて欲しいと思ったんだ。ちょっと気障だったかな」
頭を掻きながら照れたように視線を彷徨わせた侑李に、勢いよく抱きつく。
「ううん、すごく嬉しいよ!ありがとう。こんなにたくさんの花を用意するのは大変だったでしょう?」
ふわりと薫る侑李の匂いは草原ような、爽やかな匂いだ。
イメージと違わないその匂いを胸いっぱいに吸い込み、がっしりとした胸に頬を擦り寄せた。
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