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おなかがいっぱいになった私達は、再びソファーに並んで座って過ごした。
ゆったりとした時間の流れと、隣から伝わる侑李の温もりと匂いを満喫していた時のことだ。
「花菜」
侑李が突然、ソファーから降り、私の目の前に跪いた。
ピンと伸ばされた背筋と真っ直ぐ向けられた真剣な眼差しに、私の緊張もうなぎ登りに高まる。
昼間だけど、遂に、遂にその時が来たのか……!
煩いくらい走り出した心臓は、私を置いてどこかへ行ってしまいそうで怖い。
「僕と結婚してください」
ストレートな台詞がきたー!
「はいっ! 喜んで!」
どこの居酒屋だ。
でも、私は自分のそんな残念な返答に気付くはずもなく、私の返事を聞いて破顔した侑李に目を奪われた。
「ありがとう。じゃあ、着いてきてくれるね?」
「はい!……え? どこに?」
「もちろん、僕の故郷にだよ。もう帰らなくてはいけないんだ。これ以上、故郷を不在にするわけにはいかなくてね。でも、花菜を手放すなんてことはできないから、結婚を受け入れてくれて嬉しいよ」
そう言って、侑李はいつもと変わらない優しい表情で、私の両手を握り、左右の手の甲にそれぞれ柔らかい唇を軽く押し当てた。
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