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「ただいま~。ママ、これ。」
「パパおかえり~。たくさんもらったわね~義理チョコ。」
コタツ布団の上で丸まってたあたしは、耳をピンと立てた。パンパンの紙袋を受け取ったママさんは、不機嫌そう。お返しの出費を考えると、そりゃそうね。
部屋着に着替えたパパさんがあたしを抱き上げた。
「チロル~僕は、お前だけだよ。」
・・・哀れなオッサンねぇ。ホントはママさんや娘のヤエコからチョコ欲しいくせに。
ママさんがコタツの上に、土鍋を持ってきた。蓋を取ると、熱々の、鍋焼きうどんのダシのいいニオイがホワッと広がった。
クンクン、美味しそうなニオイだわ~。
「おー、うまそう!いただきまーす。」
「はい、どうぞ。」
パパさんはハフホフいいながら、うどんをすすっている。キッチンのテーブルではママさんが紙袋の中身を出していた。
あたしはテーブルの上にジャンプして、ママさんの顔を見つめた。
「ん?チロル、チョコはダメ。猫には毒なんだから。」
そんなの欲しくないわよ。鍋焼きうどんのニオイを嗅いだら、鰹節が欲しくなったの!チョーダイ!
「ニャーニャーン!」
「はいはい、チロルはかわいいねぇ。」
そんなの分かってるわよ!だから、鰹節!
「ニャニャニャーン!!」
「チロル、こっちにおいで~。」
振り返ると、パパさんが土鍋から取り出した、蒲鉾を掌に載せていた。
・・・パパさん、あたしあなたの事、好きになりそう!
「チロルには塩分が高いわよ。」
「ちょっとくらいいいだろ。な、チロル。」
あたしはパパさんの隣で再び丸くなった。
パパさん、ママさんからチョコ貰えなくても、美味しいごはんを作ってもらえて、幸せ者よ。あたしも今、幸せ・・・グーグーグ~。
ヘソ天で寝てるところに、娘のヤエコが帰宅してきて、買ってきたおっぱいチョコをあたしのお腹にのせて、SNSにアップしたのを知ったのは、後日の事。
ヤエコ、本命チョコあげる相手がいなくて、バレンタインが嫌いなのはわかるけど、あたしで憂さ晴らしは止めてほしいわ・・・。
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