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深呼吸の後、三幸は口を開いた。
「あなたはどうして、こんなことをするんだ」
「こんな? こんなことって、どんなこと?」
三幸の真剣な眼差しと口調をあざけるように質問が質問で返された。
「銃の密売組織や、密造工場、それらを銃で破壊する。そんなことをしたって何になる」
「銃の撲滅。私は一つ残らず破壊する。このヨコハマから、日本から、必要のない銃を一切排除する。かつての銃のない国を取り戻すために」
「やり方が間違っている! そのために銃を使うなんて」
「じゃあ何を使うの? 剣? 日本なら刀か。マンガじゃないんだから、弾なんか切れないよ。夢見すぎ」
「僕が言いたいのはそういうことじゃ――」
「根来三幸。いや、コードネーム:ラッキーストライク」
いきなり名前を呼ばれ、吊り上がっていた眉が途端に下がる。
「君には同情するよ。あんな凄惨な事件、起きていいはずがない。なのに、銃社会の被害者である君が、どうして銃を取らないのか。私は不思議でならない。NRAにそそのかされたの? それとも怖くて取れないの?」
サングラスに映し出される新聞、ネットニュースの記事に目を通すKQ。
三幸は力なく肩を落とす。手も震えている。フラッシュバックされる記憶から目を逸らすように眼球が右往左往する。
「忘れてしまったようだから、思い出させてあげよう。ほら、跪きなさい。女王の前なんだから」
額に銃口を押し付けられると、片膝から崩れてしまう。跪いて突き出たもう方の膝、KQはそこをブーツで踏みつける。そして自ら手にしていた銃を三幸へと差し出す。
「銃を前に人間がいかに無力か。一番知ってるあなたが、銃を持たないなんて見てて腹が立つ」
息は乱れ、涙がこぼれる。KQはその姿を見て、ため息をつく。そうして差し出した銃を揺らして取るよう促す。それでも三幸は頑なに動かない。
ガンプレイのように巧みな手さばきで再び銃口を三幸の額へ。
「はぁ、それでも取らない、と。じゃあ、さようなら」
引き金は力強く引かれる。
撃鉄が下りる。
カチリ。
雷管が弾かれた。
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