4th Shot : Rat 4

3/6
前へ
/31ページ
次へ
 ――3時間ほど遡る。  夜中のヨコハマはまだ熱と光がまだまだ残っている。自転車を押しながら雑踏を抜け、ビルの間に落ちた深い影に消える三幸の背中。  黒いシャツと赤いカーゴパンツをトレードマークとする拳銃専門の密売組織、名を黒い鼠(ブラックラッツ)。今回はその組織実態の裏付け調査を行うこととなった。  ちなみにここはヨコハマであり、トーキョーでもチバでもない。  その名の由来は取引が行われる場所にある。食品を保管する冷蔵施設のある倉庫で行う。本来食品を梱包する箱の中身を銃と詰め替えたり、小売りする場合はポテトチップスの袋に1丁の拳銃を入れたりもする。  残るのは残飯とそれを食らう鼠。故に黒い鼠(ブラックラッツ)と呼ばれている。決して権利関係にうるさいキャラクターからではない。  黒い鼠が比較的規模の大きい取引を行う、という情報がNRAより三幸にもたらされた。NRA、反ライフル協会が子飼いにしている情報屋は三幸だけではない。警察や政府機関への情報提供を行っており、犯罪撲滅に協力しているという立場上、相互に情報交換ということもしている。  ただ、三幸に落ちてくる情報はほぼ確定した情報だ。  三幸はその裏を取るのが役目であり、証拠の確保が求められる。もっとも危険な仕事である。日本、とくにヨコハマでは三幸しかこんな嫌な仕事(ダーティーワーク)しない。  夜食を買い求めた工場作業員用の弁当を自転車で配達し終えると、表の仕事はそこで終わり、裏の仕事へと直行する。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加