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黒い鼠の常套手段、それは囮だ。
取引現場近くで組織の構成員がたむろし、騒音、時には発砲して注目を集める。当然通報されて警察が出動。彼らの確保に向かう。組織の幹部はバイクで、下っ端は足で逃走する。もちろん抵抗する。逮捕劇が展開されるのだが、そこには観衆が集まる。その観衆も構成員であり、動画をアップロードする。その広告料も活動資金となっている。そうやって注目を集めて、取引現場から人の目を逸らさせる。
騒動の間に、銃の取引は無事に完了してしまう、という仕組み。
構成員の乱闘事件後に拳銃が拡散されていることから、監視カメラや発信器付きの拳銃を使用してそれが判明した。
三幸の任務は、取引現場となりそうな場所の目星をつけ、そこで動画がアップロードされるのを待つ。その後、動きがあれば取引の証拠写真を押さえること。
拳銃所持は自衛手段の一つであり、A国では所持することが憲法で認められている。所持しているだけで糾弾は難しい。その売買、金銭による取引が認可なしに行われている証拠が必要なのだ。でなければ警察が動かないし、動けない。
動画サイトにアップロードが集中し始めた。それと同時に三幸はGPSトラッキングアプリを起動する。
昼間、自分を人質に取った男達、まさしくあれが黒い鼠である。あの前に依頼を受けており、調査対象である認識があったため、隙を見てKQが投げ飛ばす前にGPSを男に忍ばせておいた。
矢印状のマークが止まる。食品加工会社の工場兼倉庫。
黒いネックウォーマーとニット帽。ジャージとスラックスも黒。目の周りも黒いドーランを塗り、その姿まるでシルエット。建物の隙間を塗って、影から影に移動する。
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