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顔だけ見ればどちらが売人なのか、買付人なのか区別が付かない。簡易的な机に載せられたアタッシュケースに入った現金。それを挟んで向かい合っているのがどちらも町のどこにでもいるチンピラなのだ。やはり服装が黒と赤の上下で見分けるほかない。
荷物の揚げ下ろしをするトラックの入場スペース。一台のトラックは荷台の扉が開いており、中身は銃器メーカーの専用ケース。机には試供用に用意された銃が1丁。もう一台トラックが頭を中に向けて、そのヘッドライトを照明代わりに使っている。
三幸は比較的に荷物が積まれていない荷棚に上っており、そこから全てが見渡せた。
カウンセラーから拝借したデジカメで全てを撮る。もちろん改造して一切音も光も出ない。
取引は終了したようで1人がアタッシュケースの蓋を閉める。
「いよぉ、入るんだろ。出てこいやぁっ!」
声がこだまする前にもう1人が机にあった銃を取って天井に向かって発砲した。
三幸は透かさず顔を伏せた。鼓動が早くなる。見つかってしまったのかと、ニット帽に汗が滲む。
「俺の部下が世話になったみてーじゃねーか。えぇ! キラークイーンさんよぉ!」
その声を聞いてデジカメに写真を確認してみる。よく見ると奥で見張りをしている男の頭と手に包帯が巻かれていた。昼間に三幸を人質にとった男だ。パキリと折られた指にギブスはなく、病院で治療を受けてはいないようだ。
「こいつらから話は聞いてる。お前が来ることは想定済みなんだよ。今に外で暴れてるうちの馬鹿共が駆けつけてくるぜ。お前がやられる姿を生で見にな」
自分の存在がバレていないことに安堵する。三幸はカメラだけを出して、モニター越しに片眼は瞑りながら現場を確認する。
包帯男が痛々しい手で指を指す。
「奴だ! キラークイーンだ!」
光の当たっていない倉庫奥、真っ赤なレザー女が姿を現す。
”やっちまえ”の号令の前に部下達は拳銃で撃ち始めていた。暗がりに備えていたのか全員拳銃の下にフラッシュライトを装着していた。サーチライト照射後の一斉射撃のように銃弾がKQへと向かって飛びかかる。
彼女は抵抗もなく、ただ立っていた。
バスバスバスッ。
そして煙に包まれた。
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