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「はいはい、じっとしててくださいましねー。……オーケー。顔情報を解析した結果、彼氏の名前は根来三幸。年齢16歳……は、知ってるか。クラスメートでいらっさるものね。へへっ! ……も一つ、今日アップした動画の終わり、ドローン空撮に彼氏の顔が映ってるねぇ。デバガメは困るよ君ぃ! 最近、やけに警察の出動が早いんだよね。もしかして彼氏が原因かねぇ、ねぇ、調べた方がいいよねぇ、女王陛下?」
勇は喉を指で押さえた。その下には透明なパッチが張ってあり、声帯マイクである。
「……那須野」
口を小さく開け、吐息に混じらせて囁く。
「はい、何でございましょう」
「うるさい、オタンコナス」
「……失礼いたしやしたー」
インカムの通信は切れた。那須野ヨーコはどことも知れぬ暗く、複数のモニターしか光源のない部屋でため息をつく。
授業の終了と昼休みの始まりを告げるチャイムがなる。公民教師が締めの挨拶をする前に誰もが教室を後にする。
三幸は教科書をカバンに仕舞うなどして、勇から一度目を離した。ふと、彼女はお昼、どうするのか、なんて考えが視線を動かし、ざわめく教室で二人は目が合う。
一瞬の動揺。端から見れば、勇は立ち、自席に座る三幸を指さしているように見えるだろう。ただ二人にしか分からない。その手には単発式小型拳銃が握られ、その銃口は三幸に向けられている。
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